「レームダック」は、影響力が弱くなった政治家や社長のこと
超簡単な説明
レームダックってのは、もうすぐクビとか引退なのにまだ席にいる人のこと。
力は落ちてるけど、たまに最後に大仕事する人もいる。
でも気がゆるんでトラブル起こすこともあるから要注意。
由来
この言葉はイギリスで18世紀ごろから使われ始めましたが、今ではアメリカの政治でよく使われています。特に、任期がもうすぐ終わる大統領が何もできなくなる状態を「レームダック」と呼びます。
具体的な説明
「レームダック」は足がけがをしていて、うまく歩けないアヒルのことです。それと同じように、もう力がなくなってしまって、周りにあまり影響を与えられない人のことを言います。
「レームダック（Lame Duck）」は、もともとは足をけがして動きがにぶくなったアヒルのことでした。そこから転じて、すでに退任が決まっているのに、まだその職にいる人、たとえば選挙で負けたあと任期が残っている政治家や社長のように、決定力や影響力が弱くなってしまった立場を表します。
株の世界でも、交代が決まった社長や、もうあまり力を持っていない取締役に対して使われることがあります。
政治や経営において「レームダック期間中にもかかわらず、現在も評価されている良い施策・判断」の代表的な事例です。
バラク・オバマ大統領（2010年晩期）
– “Don’t Ask, Don’t Tell”廃止法の成立
2010年末、軍における同性愛者差別禁止政策の撤廃を成し遂げました。これは、レームダック期間中でも進歩的改革が可能であることを示した象徴的な例です
フランクリン・D・ルーズベルト（1932–33年）
– テネシー川流域開発構想の基礎づくり
大統領選に勝利したものの就任前のレームダック期に、農業・電力政策を準備。これが後の「テネシー川流域開発公社（TVA）」構想へとつながりました。
政治・経営における“レームダック”がもたらした最も深刻で語り継がれる失敗事例を、代表的なものからご紹介します。
フレッド・グッドウィン（Fred Goodwin） ～RBS経営危機（2009年）
概要：RBS（ロイヤルバンク・オブ・スコットランド）のCEOとして、巨額買収（例えば1130億ポンド相当のABN Amro取得）を主導した後、2008年末に経営危機に直面。2009年1月に退任を表明しましたが、その後RBSは国家により国有化されるほどの巨額赤字（241億ポンド）を出しました 。
解釈：レームダックとなった時点でもなお、過剰買収を止められず、現場は混乱状態。CEO交代直後であっても、累積したリスクの尻拭いは誰もできず、国民経済全体に深い傷跡を残す結果となりました。
ビル・クリントン大統領 ～最後の日の恩赦乱発（2001年）
概要：退任直前、当時のクリントン大統領は「恩赦（pardons）」を140件以上（連邦罪・州罪含む）行い、関係者や友人・文化人にも及んだとされ、強い政治的・社会的反発を生みました 。
解釈：レームダック期に“責任の目”が弱まる隙をついて、恩赦が乱発され、制度的信頼を損ない、政治文化に大きな悪影響を及ぼした典型例とされています。
例文
「次の社長が決まってからは、今の社長はレームダックになってしまったね。」
よくある疑問
Q. レームダックは悪いことなの？
A. はい、あまり良い意味ではありません。力が弱くなっていることを表します。
Q. どうしてアヒルなの？
A. アヒルは、足をけがするとゆっくりしか歩けません。それを人にたとえているのです。
Q. 株とどう関係があるの？
A. 社長がレームダックになると、会社の未来に不安が出て株価が下がることがあります。
Q. 子どもでも使っていい言葉？
A. はい、大人が話しているのを聞いて知っておくと、ニュースがもっとわかりやすくなります。
Q. レームダックにならないためにはどうすればいいの？
A. 信頼されて、最後まで仕事をしっかりすることが大事です。
Q. どうして「力が弱くなった人」なのに、仕事はまだ続けるのですか？
A. 任期が終わるまで法律的にはその仕事に就いているからです。でも、もう次の人が決まっていたり、人々の信頼がうすれていたりすると、周りが話を聞かなくなってしまうのです。
Q. レームダックが会社にいたら、どんなことが起こるの？
A. 会社の中で方針がブレたり、社員たちが次の社長を気にして動かなくなったりします。株価にも影響するかもしれません。
Q. レームダックでも、いい仕事はできるの？
A. もちろんです。中には、任期の最後までしっかり働いて成果を出す人もいます。ただ、まわりがそう見てくれないと、うまくいかないこともあります。
Q. 「レームダック」と言われたら、本人はどう思うの？
A. あまり良い気持ちはしないかもしれません。もう役に立たない、と思われているように感じてしまうからです。
Q. レームダックはどんなときによく使われるの？
A. 選挙に負けた政治家、退任が決まっている社長やリーダーなど、「もうすぐ終わるけど、まだそこにいる」という人によく使われます。
Q：レームダックになると、本当に仕事をしなくなるのですか？
A：すべての人がそうとは限りません。たとえば企業のレームダックCEOは、むしろ市場が低く評価する中でパフォーマンスを上げるケースもありました（Gabarroらの研究）。一方、政治の世界では投票欠席が増えたり、公共サービスの質が落ちる事例も報告されています（Koopman・Toralらの研究）。
Q：なぜ公共サービスの質が下がるのですか？
A：任期末の政治家が、自分の側近を守るために人事をいじったり、選挙後の状況に対して投げやりになることがあるからです。ブラジルの研究では、医療や福祉サービスの提供量が実際に減った例が示されています（Toralら）。
Q：レームダックになると、人は自由にふるまえるのですか？
A：はい、その通りです。再選のプレッシャーがないため、議員は自分の信念に従って投票しやすくなります。ただしそれが、政治的な極端な立場につながることもあるとされています（Schoenenbergerの研究）。
Q：企業のレームダックCEOが成功するのはなぜ？
A：CEOが交代前に成果を残したいと思う気持ちや、ライバルたちが次の昇格を目指して競争することが、良い結果につながることがあります（Gabarroら）。市場が過小評価してしまうため、そこに意外な投資チャンスも生まれるのです。
Q：レームダック期間は「悪いこと」ばかりですか？
A：一概には言えません。政治の世界では混乱や機能不全を生みやすい一方、企業や個人レベルでは最後の力を振り絞って成果を出すチャンスともなります。その人がどんな行動をとるかによって、レームダックの「意味」は変わってくるのです。
関連論文
政治家焦点：Guillermo Toral「The Lame‑Duck Effect…」（IE Insights, 2025年3月）
概要
選挙で敗北した政治家（レームダック政治家）が、任期終了までの間にどのように行政を扱うかを詳しく分析しています。
主な結果
- 任期末の政治家は、自党の再選や自身の保身のために調達・規制・人事を活用。
- ブラジルの事例では、公務員の解雇・採用操作により、公共サービス提供の質が低下。
- 病院・福祉など市民のサービスが停滞または悪化する傾向あり。
解釈
客観的には「力がなくなる」ように見えて、実際はレームダックも戦略的に動く存在。特に公共行政においては、有害な影響を与える可能性が高いと示唆されています。
行政への影響：「Turnover: How Lame‑Duck Governments Disrupt…」（The Journal of Politics, 2024年）
概要
ブラジルの自治体データを使い、選挙後から後任着任までの行政人事とサービス供給を定量分析した研究。
主な結果
- 選挙敗北後、短期雇用の公務員解雇や新規採用が増加。
- その後、医療などの重要サービスで業績悪化が見られる。
- 計量手法（回帰不連続）により、因果効果を特定。
解釈
行政の中枢に混乱が生じ、公共サービスが著しく停滞する「レームダック期」の典型的なパターンを示しています。政治的な「抜け目ない操作」が現場に負担をかける構造が浮かび上がります。
企業経営者焦点：Gabarro et al.「Lame‑Duck CEOs」（SSRN, 2018年）
概要
CEO交代が決まり、本格的に移行期となった「レームダックCEO」がいる企業の業績を調査
主な結果
- 発表後、株価の一時的な下落はあるが、実際には年率＋9.6％のファクター調整超過収益（alpha）を達成。
- 決算発表期にも異常収益を上げ、内部競争が激しい企業ほど好影響が強い。
解釈
市場はレームダックCEO入りの企業を過小評価しがちですが、実際には移行期に集中することで成果を出すケースも見られる、という驚きを伝える研究です。
米国議会セッション関連：Koopman, Mitchell, Hamilton「How Lame Are Lame Ducks?」（Mercatus Brief, 2016）
概要
米上下院におけるレームダックセッション（選挙後–次期議会開始前）での議員行動を、52,000件以上の投票記録から統計分析
主な結果
- 投票欠席率：下院＋4.2％、上院＋2.75％増。
- 党派統一率：約3ポイント低下。
- 議員は自身の党や有権者に煩わされず、自由に動く余地が生まれる。
解釈
レームダックとなった議員は、責任感から解放される一方、自分の信念や将来の仕事（ロビイングなど）へ寄る傾向が見られ、議会運営に影響を与える局面があることがわかります。
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