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PERだけ見て株を買う人が、必ず見落としている「数字の向こう側」—『きみのお金は誰のため』

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「この銘柄、PERが低いから買いだな」 「高配当株を積み立てて、老後に備えよう」

投資を始めると、私たちはつい指標や手法に目が行きがちです。でも、ちょっと待ってください。そもそも「お金」って何なのか、ちゃんと考えたことはありますか?

元ゴールドマン・サックスのトレーダー、田内学さんの『きみのお金は誰のため』は、投資テクニックを教える本ではありません。それよりもっと根本的な「お金とは何か」「経済とは何か」を問い直す一冊です。

この本を読んで、私は危うく大きなミスを犯すところでした。

財務指標だけを見て「買い」と判断していた銘柄が、実はリスクの塊だったことに気づかされたんです。今回は金融ブログの視点から、この本が投資家のマネーリテラシーをどう高めてくれるのか、そして実践で気をつけるべきポイントも含めてレビューします。


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この本が教えてくれる4つの本質

1. お金の正体は「誰かに働いてもらうチケット」

本書の核心がこれです。

私たちは「お金があれば問題が解決する」と思いがちですが、実際にはお金そのものに価値はありません。カフェでコーヒーを買うとき、魔法のようにお金がコーヒーに変わるわけではなく、バリスタが淹れてくれるから飲めるんです。

つまりお金とは、誰かの労働と交換するためのチケット。

この視点に立つと、投資先企業の見方も変わってきます。

投資家への示唆: 企業の価値は、その企業が「どれだけの労働を社会に提供しているか」で測れる。財務指標だけでなく、従業員の働き方、取引先との関係、顧客への貢献を見る重要性がわかります。

2. 社会の豊かさは「生産力」で決まる

本書はジンバブエのハイパーインフレを例に挙げます。政府がお金を大量発行しても、モノやサービスを生み出す力がなければ、物価が上がるだけで生活は豊かになりません。

日本の年金問題も同じ構造です。将来、働く人が減れば、どれだけお金を貯めても、介護や医療のサービスそのものが不足します。お正月にどれだけお金を持っていても、お店が閉まっていれば何も買えないのと同じです。

投資家への示唆: 企業分析で「稼ぐ力」を見るのは当然ですが、その企業が社会の生産力にどう貢献しているかという視点も大切。イノベーション、人材育成、インフラ投資—こうした要素が長期的な企業価値を決めます。

3. 消費と投資は「未来への投票」

あなたが今日買う一杯のコーヒーは、そのカフェの存続を決める一票です。

何にお金を使うかは、その商品やサービスを「未来に残してほしい」という投票行為。好きなカフェでコーヒーを買えば、そのお店は続きます。安さだけを追えば、大切にしたいものが消えるかもしれません。

投資も同じです。株を買うという行為は、その企業の未来を支持すること。本来の投資とは、新しい価値を生み出す企業を応援し、社会全体の生産力を高める行為なのです。

投資家への示唆: 短期売買を否定はしませんが、「この会社が10年後も社会に必要とされるか」という視点を持つことで、投資判断の質が上がります。

4. 本当のお金持ちは「格差を縮めた人」

田内さんは問います。「宝くじに当たった人と、Googleの創業者、どちらが本当のお金持ちか?」

答えは後者です。Googleは、かつて富裕層しかアクセスできなかった情報を、世界中の人に無料で届けました。つまり格差を縮めることで富を得たのです。

投資家への示唆: 「この企業は誰の生活を豊かにしているか?」「どんな問題を解決しているか?」という視点で銘柄を見ると、社会的意義と収益性が両立する企業が見えてきます。ESG投資の本質もここにあります。


投資家として、この本をどう読むべきか

ここまで読んで「きれいごとだな」と感じた方もいるかもしれません。実際、本書には実践的な弱点もあります

【批評①】個人投資家の実務には抽象度が高い

本書の主張は社会全体のマクロ視点です。「生産力が大事」「投資は投票」という理念はわかりますが、明日どの株を買うかという実務判断には直結しにくい。

たとえば「生産力に貢献している企業」をどうスクリーニングするのか。財務指標のどこを見ればいいのか。そこまでは教えてくれません。

活かし方: この本は投資の「哲学」を与えてくれます。具体的な手法は別の本で学び、この哲学を判断軸に加える、という使い方がベストです。

【批評②】市場メカニズムやリスクの話が薄い

本書は理想的な経済の姿を語りますが、現実の市場には投機、バブル、情報の非対称性があります。「社会貢献している企業」が必ずしも株価が上がるわけではない、という厳しい現実には踏み込んでいません。

活かし方: 理想と現実のギャップを理解した上で、長期投資の軸としてこの考え方を持つのが賢明です。短期では市場の気まぐれに左右されても、長期では社会に価値を提供する企業が勝つ—その確信を持つための一冊として読めます。

【批評③】「みんなで貯金しても意味がない」は誤解を生みやすい

本書は「社会全体で貯金しても、生産力が上がらなければ意味がない」と主張します。これはマクロ経済の話としては正しいのですが、個人レベルでは貯蓄も投資も必要です。

読者が「じゃあ貯金しなくていいんだ」と誤解する危険性があります。

正しい理解: 個人は貯蓄も投資もすべき。ただし社会全体としては、そのお金が生産的な活動(設備投資、教育、イノベーション)に回ることが重要、という話です。


この本を読んで、私が犯しかけた致命的なミス

この本を読む前、私はある物流企業の購入を真剣に検討していました。営業利益率は高く、ROEも優秀。配当利回りも悪くない。財務指標だけを見れば「買い」でした。

でもこの本を読んだ後、ふと立ち止まりました。

「この会社は、誰の役に立っているんだろう?」 「10年後も必要とされる会社だろうか?」

そう考えて改めて調べると、ドライバーの労働環境が劣悪だというニュースが複数見つかりました。離職率も業界平均より高い。つまり、短期的な利益を人的資本の消耗で生み出している構造だったんです。

もし本書を読まず、財務指標だけで投資していたら。

おそらく私はその銘柄を買い、数年後に労働問題が表面化して株価が急落したとき、「なんで下がるんだ」と困惑していたでしょう。

この本が教えてくれたのは、数字の向こう側を見る重要性でした。

PERやROEは大切です。でもその数字を生み出している「人々の労働」が持続可能かどうか—それを見なければ、真の企業価値は測れない。

これが、マネーリテラシーが上がるということだと実感しました。


どんな人におすすめか

この本は以下のような人に特におすすめです:

投資を始めたばかりの人
テクニック本の前に読むと、投資の本質的な意味が理解できます。

指標ばかり追いかけて疲れている人
「なぜ投資するのか」という原点に立ち返れます。

子どもにお金の教育をしたい親
小説形式で読みやすく、中高生でも理解できる内容です。

ESG投資に興味がある人
「社会貢献と利益」の関係が、本質的に理解できます。

逆に、デイトレードで稼ぎたい人すぐ使えるテクニックが欲しい人には向きません。この本は即効性のある投資本ではなく、長期的な投資観を育てる本です。


まとめ:お金の向こう側には、いつも「人」がいる

『きみのお金は誰のため』は、投資テクニックを教えてくれません。 でも、もっと大切なことを教えてくれます。

それは、お金の向こう側には常に「人」がいるということ。

あなたが支払うお金は、誰かの労働と交換される。 あなたの投資は、誰かの挑戦を支え、社会の未来を形作る。 あなたが買う株は、その企業の存続を決める一票になる。

この視点を持つと、投資は単なるマネーゲームではなくなります。 社会に参加する、意味のある行為になるんです。

もちろん、理想論だけでは投資はできません。 財務分析もチャート分析も必要です。 でも、その根底に「お金とは何か」という哲学があると、判断の質が変わります。

私自身、この本に救われました。 大きなミスを犯す前に、立ち止まらせてくれたからです。

投資を始める前に、あるいは投資に疲れたときに。 ぜひ一度、この本を手に取ってみてください。

あなたのマネーリテラシーは、確実に一段上がるはずです。


『きみのお金は誰のため』田内学著

※本記事は書籍の内容を要約・引用したレビューです。詳細は書籍をご覧ください。

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