はじめに:私がNFTを「無視」していた理由
正直に言います。私は2021年のNFTブームを、完全に無視していました。
「デジタルの絵に数億円?バカげている」——そう思っていたのです。実際、2023年にNFT市場が90%縮小したとき、「ほら見たことか」と勝ち誇った気分でした。

しかし2024年末、ある事実を知って考えが変わりました。
- ブラックロック(世界最大の資産運用会社)が、米国債をNFT化したファンドをローンチ(運用資産5億ドル超)
- ソニーが独自のブロックチェーン「Soneium」を発表し、2025年稼働予定
- スターバックスやナイキが、NFTを活用したロイヤリティプログラムで成功
「NFTは終わった」と言っている間に、世界は次のステージに進んでいたのです。
本記事は、投資ブログを運営する私が、NFTを再評価した理由を正直に書いたものです。投機としてのNFTは終わりましたが、技術としてのNFTは、むしろこれからが本番かもしれません。
参考にしたのは、Web3総合研究所代表・松村優太氏の著書『図解ポケット デジタル資産投資 NFTがよくわかる本』です。
読むのが面倒な方向けに動画もあります。10分弱で見れますのでよろしければどうぞ!
1. 何が終わって、何が残ったのか
終わったもの:「サルの絵」で一攫千金
2021年のNFTブームは、デジタルアート(特にBored ApeのようなPFP=プロフィール画像)が中心でした。「買えば値上がりする」という投機マネーが殺到し、異常な高騰を生みました。
この熱狂は、完全に終わりました。 そして、終わって良かったのです。
残ったもの:「会員権」と「証明書」としてのNFT
しかし、本当に価値があるプロジェクトは生き残っています。それらに共通するのは、NFTを「投機対象」ではなく「実用的なツール」として使っている点です。
具体例:
- スターバックス:NFT保有者に特典を提供するロイヤリティプログラム
- ナイキ:デジタルスニーカーNFTで1億ドル以上の収益
- ゲーム内アイテム:プレイヤーが本当に「所有」できるアイテム
つまり、NFTは「画像」から「関係性の証明」へと進化しているのです。

2. 2025年、日本企業が本気で動き出した理由
ここからが本題です。私がNFTを再評価した最大の理由は、日本の大企業、特にソニーが本格参入を発表したことです。
ソニーの本気:Soneium(ソニューム)
2024年8月、ソニーは独自のブロックチェーン「Soneium(ソニューム)」を発表しました。
何がすごいのか?
- Optimism(レイヤー2)ベース:イーサリアムより高速・低コスト
- 2025年、メインネット稼働予定:テストネットは既に稼働中
- ソニーのIPをNFT化:音楽、ゲーム、映画などのコンテンツを活用
しかし、冷静に見るべきリスクもあります。
Soneiumのリスクと懸念
① まだ実績ゼロ
テストネットは稼働していますが、実際のユーザー数や取引量は不明です。「2025年稼働予定」というのも、あくまで予定であり、遅延の可能性もあります。
② 日本企業のWeb3での失敗例
LINEは「LINE BLOCKCHAIN」を立ち上げましたが、大きな成功とは言えませんでした。日本企業は、技術力はあっても、Web3のコミュニティ文化やグローバル展開で苦戦する傾向があります。
③ 規制リスク
日本の金融庁は暗号資産に厳しい姿勢を取っています。Soneium上でトークンを発行する際、規制に引っかかる可能性もあります。
それでも、私がSoneiumに注目する理由は、「日本の推し文化」という切り札があるからです。
なぜソニーが動いたのか:推し文化という土壌

日本人は、好きなアーティストやキャラクターを応援するために、グッズを買い、ライブに通い、SNSで語り合います。この行動様式は、NFTコミュニティの構造そのものです。
- 推しのNFTを買うことで、直接支援できる(中間マージンなし)
- NFT保有者限定のファンコミュニティに参加できる
- 推しが成功すれば、NFTの価値も上がる
つまり、「推しを応援する」と「資産を増やす」が両立する世界が、実現しようとしているのです。
ソニーは、この推し文化とNFTの親和性を理解しているからこそ、本格参入を決めたのでしょう。
3. もう「サルの絵」じゃない:2025年のNFTは「不動産」と「ウイスキー」
もう一つの大きな変化が、RWA(Real World Assets=現実資産)へのシフトです。
RWAとは何か?
物理的に存在する価値ある資産を、NFTやトークンとして小口化し、売買可能にすること。

具体例:
- 不動産:米国の賃貸物件を1万円から購入(例:RealT)
- 高級ワイン・ウイスキー樽:熟成を待って値上がりを狙う(例:Dibbs)
- 国債:ブラックロックが米国債をトークン化(BUIDL、運用資産5億ドル超)
なぜRWAが本命なのか?
デジタルアートは「好き嫌い」で価値が決まりますが、RWAは**「実物資産」の価値に裏付けられています**。
しかも、従来は富裕層しか買えなかった高額資産を、スマホで小口購入できるようになりました。
これは何を意味するのか?
NFTは、「投機」から**「資産運用の新しいポートフォリオ」**へと進化しているのです。
課題:日本では法整備待ち
日本では、RWAトークンは「金融商品」として規制されるため、まだ一般投資家が自由に買える状態ではありません。しかし、法整備が進めば、一気に普及する可能性があります。
4. そもそもNFTって何?(今さら聞けない基本)
ここで一度、基本に立ち返りましょう。NFTとは何なのか?
NFTとは「デジタルの所有権証明書」
NFT(非代替性トークン)とは、「これは世界に一つだけのオリジナルです」という証明書をデジタルデータにつける技術です。
よくある誤解:「画像をコピーされたら意味ないじゃん」
この誤解を解くには、Instagramで考えるとわかりやすいです。
あなたが人気インスタグラマーの投稿をスクショしても、そのアカウントのフォロワー数や「いいね」の数、投稿履歴までコピーできませんよね。
NFTも同じです。画像はコピーできても、**「誰がいつ所有していたか」という記録(ブロックチェーン上の履歴)はコピーできません。そして、価値があるのは画像そのものではなく、この「所有の履歴」**なのです。
あるいは、有名人のサイン色紙を考えてみてください。高性能プリンタでコピーしても、鑑定書がなければ古本屋ですら買い取ってくれませんよね。NFTは、そのデジタル版の鑑定書なんです。
なぜコピーできない記録に価値があるのか?
それは、ブロックチェーンという「改ざん不可能な台帳」に記録されているからです。
従来の銀行システムは、一つの巨大なサーバーで記録を管理していました。しかしブロックチェーンは、世界中の無数のコンピューターが同じ記録を共有し、互いに監視し合う仕組みです。
誰かが記録を改ざんしようとしても、他のコンピューターの記録と矛盾するので、すぐにバレます。
この仕組みにより、NFTの所有権は永久に、改ざん不可能な形で記録されるのです。
5. NFTが可能にした3つのこと
① クリエイターが「転売されるたび」稼げるようになった
従来のアート市場では、画家が絵を売った後、その絵が何億円で転売されても、画家には一円も入りませんでした。
しかしNFTには**「ロイヤリティ」**という仕組みがあります。スマートコントラクト(自動実行プログラム)により、NFTが転売されるたびに、売上の数%が自動的にクリエイターに還元されます。
つまり、作品が人気になればなるほど、クリエイターも継続的に稼げるのです。
松村氏の言葉:
「NFTは、クリエイターとファンの関係を『一回限りの売買』から『運命共同体』に変えた」
② ファンが「コミュニティへの貢献」を資産化できるようになった
NFTは、単なるデジタルアートではありません。多くの場合、限定コミュニティへの参加権です。
たとえば、人気NFTプロジェクト「Bored Ape Yacht Club」では、NFT保有者だけが参加できるイベントがあります。さらに、プロジェクトの運営方針について投票できる「DAO(自律分散型組織)」を採用しているケースもあります。
重要なのは、この参加権を自由に売買できる点です。コミュニティに早期参加し、盛り上げに貢献した人は、NFTの価値上昇という形でリターンを得られます。
③ 企業が「顧客との関係」を売買可能にした
NFTは、企業のマーケティングツールとしても注目されています。スターバックスやナイキは、NFTを活用したロイヤリティプログラムで成功を収めています。
企業にとってNFTは、「顧客との関係性」を資産化し、新たな収益源にする手段なのです。
6. 2025年に起きている変化
変化1:ウォレットの「透明化」—メタマスク不要の時代へ
2021年のNFTブームでは、「MetaMask」というウォレットを作り、「シードフレーズ(復元用の12単語)を紙に書いて保管しろ」と言われました。これが初心者の最大のハードルでした。
しかし2025年、状況は変わりつつあります。
新技術:アカウント・アブストラクション(ERC-4337)により:
- Googleアカウントや生体認証だけでウォレット作成可能(例:Coinbase Wallet)
- ガス代を企業が代払いするサービスも登場
- ソーシャルリカバリー:秘密鍵を失くしても復旧可能
つまり、「いつものアプリ感覚」でNFTを扱える時代が近づいています。

(ただし、これはまだ一部サービスの話。完全普及にはあと数年かかります)
変化2:AI時代の「本物証明」としての価値
2025年、AIは驚くほど精巧な画像、動画、音声を生成できるようになりました。しかし、それは「何が本物で、何が偽物か分からない」という問題を生みました。
NFTやブロックチェーンは、「このコンテンツは、いつ、誰が、どのように作ったか」を改ざん不可能な形で記録できます。
具体例:
- Content Authenticity Initiative:Adobe、Microsoft、OpenAIが参加し、コンテンツの真正性を証明する技術を開発中
- クリエイターの「AI非使用証明」:NFTで「これは私が手描きしました」と証明
NFTは、「希少性の証明」から**「真実性の証明」**という新たな役割を担いつつあります。
7. 投資家が知るべき:どのブロックチェーンが本命か
NFT市場の成長は、そのインフラとなる暗号資産の需要増加に直結します。どのチェーンが主戦場かを理解することは、投資判断において重要です。
イーサリアム(ETH):最も安定した選択肢
シェア:約60〜70%
イーサリアムは、NFT市場の「デジタルゴールド」です。高額NFT取引のほぼすべてがイーサリアム上で行われており、最も安定した選択肢と言えます。
投資視点:
NFT市場全体の成長に賭けるなら、ETHは必須です。個別のNFTプロジェクトの成否は予測不可能ですが、市場全体が成長すれば、インフラであるETHは確実に恩恵を受けます。
Solana(SOL):ゲーム分野の本命候補
シェア:約10〜15%
Solanaの強みは、圧倒的な速さと低コスト(イーサリアムの40倍速い、ガス代0.01円以下)。ゲーム・メタバース分野で人気です。
ただし、2022年に複数回ネットワークが停止した実績があり、信頼性への懸念があります。
投資視点:
ゲーム・メタバースのNFTが成長すれば、Solanaの需要は急増する可能性。ただし、ハイリスク・ハイリターン。
Polygon(MATIC/POL):企業採用のインフラ
シェア:約5〜10%
Polygonは、スターバックスやディズニーなど大企業が採用するイーサリアムのレイヤー2です。
投資視点:
企業のNFT活用が進めば、Polygonの需要は増えます。イーサリアムへの投資と併せて検討する価値があります。
Soneium(ソニューム):期待と不確実性
2025年ローンチ予定
ソニーが開発する、日本のIP(アニメ・ゲーム・音楽)をNFT化する構想。
投資視点:
まだテストネット段階であり、実績はゼロです。日本企業のWeb3での失敗例(LINEなど)もあり、成功が約束されているわけではありません。
ただし、ソニーが本気でIPをNFT化し、日本の推し文化と結びつけば、大きなマーケットになる可能性はあります。
注意:Soneiumは独自トークンを発行しない可能性があります(ETHをガス代に使う可能性)。「Soneiumに投資」というのは、Soneium上のDAppsや提携プロジェクトのトークンを指します。
8. 投資家としての結論:個別NFTではなく、インフラに賭ける
私の結論は明確です。
個別のNFTプロジェクトに投資するのは、ギャンブルです。 どのプロジェクトが成功するかは、誰にも予測できません。
しかし、NFT市場を支えるインフラ(イーサリアムやレイヤー2、取引所)に投資するのは、合理的な戦略です。なぜなら、市場全体が成長すれば、インフラは確実に恩恵を受けるからです。
選択肢A:暗号資産に直接投資する
ETH(イーサリアム)やPolygon(ポリゴン)など、NFT市場のインフラとなる暗号資産に直接投資する方法。
メリット:
- 市場全体の成長に直接賭けられる
- Web3の世界に実際に触れることができる
デメリット:
- 税制が厳しい(雑所得扱い・累進課税で最大55%)
- NISA対象外
- ウォレット管理などの技術的ハードルがある
ただし、税制改正の動きもあります:
2024年末、自民党の税制調査会で「暗号資産の税制を見直すべき」という議論が活発化しています。具体的には、分離課税(一律20%)への移行や、損益通算の容認などが検討されています。
もし分離課税が実現すれば、暗号資産投資のハードルは大きく下がるでしょう。ただし、2025年時点ではまだ実現していないため、現時点では税制面で不利という事実は変わりません。
選択肢B:暗号資産取引所の株式に投資する
「暗号資産を直接買うのは税金も面倒だし、ハードルが高い」という方には、もう一つの選択肢があります。
それは、暗号資産取引所の株式(例:コインベース / ティッカー:COIN)を買うことです。
なぜコインベース株なのか?
① 「ツルハシ屋」への投資
ゴールドラッシュで一番儲かったのは、金を掘った人ではなくツルハシを売った人でした。
どのNFTが流行るか、ETHが上がるかは不確実ですが、市場全体が盛り上がれば、取引所(コインベース)の手数料収入は増えるというのは、確実性の高いビジネスモデルです。
② ブラックロックとの関係性
記事の冒頭で紹介した、ブラックロックのRWAファンド(BUIDL)。実は、この資産管理(カストディ)を担っているのがコインベースです。
つまり、**「ブラックロックの参入=コインベースの利益」**という図式が成り立ちます。
③ NISA対応という最大のメリット
暗号資産はNISA対象外ですが、コインベース株なら新NISAの成長投資枠で購入でき、利益を非課税にできます。
これは、日本の投資家にとって圧倒的な税制優遇です。

ただし、リスクも理解すべき
コインベース株は、暗号資産市場に連動して激しく変動します。
- 2021年高値:約$350
- 2022年安値:約$30(約90%下落)
- 2024年12月:約$250〜300(回復中)
つまり、「株式だから安全」というわけではなく、実質的には暗号資産と同じくらいハイリスクです。
ただし、「個別のNFTやアルトコイン」と比べれば、ビジネスモデルが明確で、財務諸表も公開されている分、リスクは相対的に低いと言えます。
私の投資戦略:全体ポートフォリオの1〜5%で運用
重要な前提:NFT/暗号資産関連への投資は、全体ポートフォリオの1〜5%に留めています。
これは、以下の理由からです:
- 暗号資産市場は変動が激しく、ハイリスク
- まだ発展途上の市場であり、不確実性が高い
- メインの資産(株式・債券・不動産など)とのバランスを保つため
つまり、この記事で紹介する投資戦略は、あくまで「全体の1〜5%をどう配分するか」という話です。
私の配分(全体ポートフォリオの1〜5%の中で)
① コア(60%):コインベース株(COIN)
- NISA口座で運用
- 市場全体のインフラとして長期保有
- 理由:税制優遇が大きく、ビジネスモデルが明確
② コア(30%):ETH
- Web3の世界に実際に触れるための「参加チケット」兼 実益用
- 理由:技術を理解するには、実際に使ってみることが重要
③ サテライト(10%):Soneium経済圏
- 日本のコンテンツ産業への応援投資
- 余剰資金の中のさらに余剰で、失っても良い範囲
- 理由:期待値は高いが、実績ゼロなので少額に留める
具体例:
全体ポートフォリオが1000万円の場合
- NFT/暗号資産関連:30万円(全体の3%)
- コインベース株:18万円(NISA枠で運用)
- ETH:9万円
- Soneium経済圏:3万円

重要:この配分は、私の個人的な考えであり、投資助言ではありません。 投資判断は自己責任で行ってください。
9. リスクを冷静に見る
技術は進化しているが、普及にはまだ時間がかかる
- ウォレットUX:進化しているが、「誰でも使える」レベルではない
- RWA:本命トレンドだが、日本では法整備が必要
- Soneium:まだテストネット段階で、実績ゼロ
- AI対策:技術的には可能だが、社会実装はこれから
暗号資産市場の変動リスク
暗号資産市場は、株式市場よりも圧倒的に変動が激しいです。
- ETHは1日で20%上下することもある
- コインベース株も、暗号資産市場に連動して激しく変動する
だからこそ、全体ポートフォリオの1〜5%に留めることが重要です。 この範囲なら、たとえ全額失っても、生活や長期的な資産形成には影響しません。
まとめ:私がNFTを再評価した理由
NFTバブルは崩壊しましたが、NFT技術そのものは終わっていません。むしろ、「見えないインフラ」として、私たちの生活に静かに溶け込み始めています。
私がNFTを再評価した理由は:
- ブラックロック、ソニーなど大企業の本格参入
- RWA(現実資産のトークン化)という実用的な方向性
- 日本の推し文化とNFTの親和性
ただし、個別のNFTプロジェクトに投資するのはギャンブルです。投資家として合理的な選択は、インフラ(ETHやレイヤー2、取引所株)に賭けることだと私は考えています。
「ETHを直接持つ」か、「インフラ企業の株を持つ」か。自分のリスク許容度に合わせて選べるのも、2025年の魅力です。
そして何より重要なのは、全体ポートフォリオの1〜5%に留めること。 この範囲なら、失っても生活に影響せず、成功すれば大きなリターンが得られます。
NFTを買うということは、株を買うことが企業への投資であるように、デジタル時代のクリエイターへの応援です。儲かるから買うのではなく、好きだから持ちたい——その気持ちを忘れなければ、価格が上がっても下がっても、この新しい世界を楽しめるはずです。
復習に動画を見てみてはいかがでしょうか?


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